牙-アフリカゾウの「密猟組織」を追って/著者:三浦英之氏

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朝日新聞の記者でアフリカ特派員だった三浦英之氏の「牙-アフリカゾウの「密猟組織」を追って」を読んだ。ザ・ノンフィクション、といいたくなるような作品。三浦氏が象牙密猟の真実にねじり迫る姿や、密猟に紐づく現地の人々がリアルに描かれている。そして訪れたことがないが、アフリカの自然が持つ雄大さも感じられる作品だった。ノンフィクションを読んだことがない、という人にもお薦めしたい。

 序章「大地の鼓動」を読んだ段階で、すでにどっぷり作品に引き込まれてしまった。ケニアのマサイ・マラ国立保護区で、日本人獣医師・滝田明日香氏が子ゾウを治療する姿、砂埃を舞い上げて激昂した母ゾウから離れるサファリカーが目に浮かぶ。これが日常茶飯事とは。序章ではアフリカゾウの基本的な生態についても記されており、著書を前のめりで読み進めるのを手伝ってくれたように思う。勘違いでなければ、物語はおおむね取材活動の時系列順に記されている。その点も非常に読みやすかった。

とはいえこの作品は、単なる娯楽の材料として消費されないように設計されていると感じた。冒頭にちらついていた象牙密猟における日本の影は、物語が中国という大国と密猟の深い関係に焦点を当てることで、一度は読者の頭から離れるが、終盤で三浦さんは、日本がいかにアフリカゾウの象牙密猟に寄与してきたかという事実を、否定しようがないレベルで突きつける。

一国の立ち振る舞い一つで、雄大な哺乳類が絶滅する。人間の欲望によって肥大化した消費が、幾多の暮らしと絡まり合って、一つの種を根絶させる。ダンボなんて伝説の生き物を元にしたアニメになる。アホみたいな感想だけど、それは嫌だな。そして、これは象牙に限ったことではないかもしれない。私たちは日ごろ、なんら意識することなくあらゆるものを消費している。最近では環境に配慮したプロダクトもたくさんあるが、それもどこか上っ面が”オシャレ”なだけで、生産背景や原料の出どころまでに想いを馳せることは少ない。ただ、その感覚はぼくら輸入大国が放置していていい問題ではないだろう。

三浦さんの著書

     

獣医師・滝田明日香氏の著書(※作中に非常に面白いとの記述があったので読んでみたい)

   

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