外来種と外来産業

鱒(マス)
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チリのサーモン養殖は、かなり独特な産業だと思う。輸出金額では、トップ3に入ろうかという振興ぶり。もともとはアメリカやノルウェー、日本がこぞって技術移転を試みた時期がある。サーモン養殖は、チリにとっては外来産業。そしてサーモンそれ自体も、自生するものではない。外来種と外来産業。この二項目の共通点を探ってみよう。

チリ政府は5月29日に、2018年の貿易レポートを発表している。輸出金額で見ると、サーモンの輸出額は「銅鉱石」「カソード(銅の電極板)」「ブドウ」についで4位。上位2つをまとめて「銅産業」とするなら、トップ3に入る。1980年代後半から急激に輸出額が伸び続け、30年後にはこうして巨大産業になった。未来は分からないもんだ。

外来種としてのサーモンも、30年で一般的になった。導入初期の粗悪な生簀から逃げ出たサーモンは帰化して、チリ南部では今や普通種。日本でいうところの、ミシシッピアカミミガメみたいなもんだ。南部の観光名所で案内図をもらえば、たいていの地図には釣りマークがある。街には釣具屋があり、趣味としても定着してきている。外来種のくせに禁漁期間まで設けられているほど。

外来産業と外来種の共通項は、エコシステムを改変(壊変)させることにあると思う。例えばチロエ島は、ジャガイモしか獲れるものがないといわれた土地だったらしい。今でもジャガイモは有名らしく、16年にこの島を訪れたときは、かわったジャガイモを市場で見かけた。一方で、サーモンやムール貝の養殖に従事する者も多い。43000ヘクタール超のチロエ国立公園、カラフルな高床式家屋で有名なカストロなど、観光地としても魅力的だ。チロエ島出身のカルロス・ロボス氏いわく「今では観光地として有名になっているカストロだって、昔はすごく小さな街だった。サーモンの養殖を機にチロエ島全体が隆盛したのは確か」。街が潤い、観光振興にも貢献したってわけだ。

チロエ島を巡っては16年、有害藻の大増殖で大量死した養殖サーモンのうち9000トンを島沖に捨てた後、再度有害藻が発生し大規模な赤潮を招いたことで、地元漁師と養殖事業者が対立した話が有名だ。ぼくとしては、サーモンの養殖と赤潮発生の因果を科学的に証明する資料を見たことがないので、いまのところこの外来産業は、その汚染により既存の漁師の仕事を奪うことなく、社会的にはポジティブな効果をもたらしていると思っている。

当のサーモンはというと、現在は禁漁期間中なので、猛禽類による捕食に怯えながらも、在来種を食いまくっているに違いない。この点は、現段階でサーモン養殖についてぼくが考える、唯一明確なネガティブポイント。以前のnoteでも書いたけど。つまり、この外来種をコントロールすることが、サーモン養殖を環境保全あるいは自然保護という観点から見たときの、肝だと思う。けれども、外来種をコントロールすることは至難の技。というかほぼ無理。

制御不能。これも外来産業と外来種の共通項だろう。

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